古来より、その希少性と美しさから世界共通の資産として扱われてきた「金」
2020年に金の価格は過去最高値を更新し、金融資産としてあらためて注目を集めています。
【資産運用としての金】というテーマで、2回に分けて金の魅力について解説していきたいと思います。
Contents
■金の特徴
まずは金そのものの特徴から、代表的なものを並べていきます。
無国籍資産
通貨だけでなく株式や債券など、金融資産の殆どには発行体が存在します。
発行体である国や企業が価値を保証することで、資産としての価値が生まれています。
一方で金は鉱物であるため発行体が存在しません。
有史以来「金」そのものの価値を人類全体で認めているので、世界共通の資産ということになります。
有限性
金は鉱物資源であるため採掘できる量に限りがあり、この有限性と希少性が最大の特徴といえます。
2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナウイルスなど、世界的な金融危機や経済危機が起こる度に、世界各国で通貨が大量に発行され続けています。
信用の問題を抜きにすれば、通貨/貨幣だけでなく株式や債券もいくらでも増刷することが可能です。
しかし金はそれができません。
この有限性が金の根本的価値を揺るがないものにしています。
有史以来採掘された金の総量は19万7500トンといわれています(2020年2月時点)
大きさとしてはオリンピック公式プールの約4杯分に相当します。
そして残りどれだけの金が採掘できるかというと、推定埋蔵量は約5万4000トンといわれています。
(参照:United States Geological Survay)
金が限られた資産というのがボリュームとしてイメージできましたでしょうか?
ここで大切なのは金の産出ペースと、現金の増加ペースの違いです。
1959年以降、金は平均して年1.6%のペースで産出されてきた。
一方で米ドル通貨供給量は、金の産出量の約3.6倍に上る年5.7%のペースでで拡大してきました。
つまり金の採掘ペースの3.6倍のペースで、世の中にドルが供給され続けてきているということです。
各国の中央銀行が現金を刷れば刷るほど現金の価値は薄まり、金の相対的な価値が高まっていくのは、希少性を考えれば当たり前の話です。
そして現在、コロナ禍において通貨の供給量は膨張し続けています。
■投資商品としての特徴
これまで述べてきたのは金自体の代表的な特徴です。
今度は投資商品という目線でみたときの特徴を並べていきます。
金利、配当がない
株式であれば株主配当金、債券であれば利息が、それぞれの保有者に支払われます。
いわゆるインカムゲインと呼ばれるものです。
一方で金には金利がないため、保有していることで受け取れる収入はありません。
つまり金の売買時の価格差をもってでしか利益を出すことができない、キャピタルゲインのみの投資商品ということです。
信用リスクがない
先述しましたが金には発行体が存在しません。
発行体がないということは金融資産における「信用リスク」がありません。
信用リスクというのは、株式では企業の倒産、債券においては償還や利払いの遅延や中止などの債務の不履行、いわゆるデフォルトリスクを意味します。
株式や債券などの有価証券は「paper asset」と呼ばれ、その資産価値が時としてゼロになる可能性もありますが、「real asset」である金はその価値がゼロになることは現実的に起こりえないということです。
■価格変動が大きい
「有事の金」というフレーズがあるように安全資産のイメージもある金ですが、その価格の変動は実は大きく、特に近年は価格変動の大きさが増してきています。
こちらは金の長期スパンでの価格推移になります。
2000年以前と比較すると、近年の価格変動の大きさが目立つと思います。
●金の価格が動く要因について
●2000年以降の値動きの背景
などについては次回の記事で詳しく解説していきたいと思います。
いずれにせよイチ投資商品として捉えた時には、この「価格変動が大きい」というのは大きな特徴といえます。
■資産運用における金の有効性
ゴールドの投資商品としての特徴をみていくと、どの世代の資産運用にも有効だというのが分かります。
若年層を中心に、少ない資金でも取り組める「積立投資」
まとまった資金で購入していく「一括投資」
どちらにおいても金はポートフォリオに組み入れるべきでしょう。
それぞれの資産運用における金の有効性を解説していきます。
積立投資における金
まず、金を積立投資で投資していく方法は「純金積立」、「投資信託/ETFの積立購入」があります。
純金積立は田中貴金属や三菱マテリアルのような地金商からか、楽天証券などの証券会社で購入していくことができます。
毎月の購入金額としては証券会社であれば月々1,000円から、
地金商の場合は月々3,000円から積立購入が可能です。
また、地金商や証券会社ごとに購入手数料が異なります。
また積み立てた金は、現金だけでなく金の延べ棒や金貨などの現物として交換することも可能です。
もうひとつの投資方法は「投資信託/ETF」を通しての金への投資です。
(ETFは上場投資信託のことですが、投資信託との違いはコチラの過去の記事をご参照ください)
これは実物の金ではなく、金価格に連動するように運用される有価証券を購入していくということになります。
実物の金を保有する訳ではないので、保有コストなどはかからない分、投資信託/ETFとしての信託報酬(運用手数料)は発生する形になります。
金を投資対象とする投資信託/ETFの信託報酬も近年は低くなってきています。
また、金融機関によっては「iDeco」のラインナップにも含まれています。
金の売買益には本来税金は発生しますが、iDecoやNISAを通して購入することで、非課税または大きな税優遇を受けられる点が投資信託/ETFの魅力といえるでしょう。
重要なのは積立投資のポイントを理解しているか
純金積立でも投資信託/ETFでも積立投資の場合では抑えておくべきポイントがあります。
それは資産の評価は常に「数 × 価格」という大原則です。
株式であれば「株数 × 株価」
投資信託であれば「口数 × 基準価格」
金であれば「グラム数 × 金価格」
どんなに価格が上がっても、保有している数が少ない場合は資産総額としては小さくなってしまいます。
毎月一定額を購入していく積立投資をしている場合、投資対象の価格が上がれば取得できる数は少なくなり、価格が下がれば取得できる数は多くなります。
これは毎月スーパーで同じ額の買い物をしていたとして、野菜が安い時の方が沢山買えるのと同じ原理です。
積立投資においては上がり続ける商品のみを投資対象にすると、取得していく数が稼げていなく『出した金額に対して、思ったよりふえていない』という結果を招いてしまいます。
ここで積立投資としてのゴールドの有効性が発揮されます。
こちらは国際的な金価格とアメリカの株価指数「S&P500」を並ばせたチャートです。
●株式が上昇している時期は、金は下落または低迷
●株式が下落している時期は、金は上昇しています
(あくまで過去の値動きですし、金の価格に影響を与えるのは株式だけではありません。詳しくは次回の記事にて細かく解説していきます)
積立投資で購入していくポートフォリオにおいて、株式だけでなく金を組み入れることでポートフォリオ全体としての「数」を取得しやすくなるということです。
積立投資において株式のみ購入していて世の中の株価が上昇している場合、取得できた数は少ない結果を迎えてしまいますが、そこに金を組み入れていた場合は金の方で取得していく数は多くなる可能性もあるということです。
積立投資に取り組む期間は人により当然異なりますが、短くとも10年、若年層の時期から老後資金目的で取り組んだ場合、長い場合30年ほど運用することになります。
その間に金融市場がどのように推移しても、ポートフォリオ全体として効率よく数を取得していくためには株式だけでなく金も投資対象に組み入れるのが有効的ということになります。
一括投資におけるゴールド
まとまった資金の投資でもゴールドは有効的です。
先述したとおり株式とゴールドは値動きが異なるので、ポートフォリオ全体の値動きを穏やかにする効果が期待できます。
簡単に言えば株式市場が大幅に下落した時、ゴールドがあまり下がらなければ、株しか持っていないポートフォリオよりも値下がり幅は抑えられるということです。
もちろん株式と金が同時に下がることもありますので、債券や通貨(現金)もポートフォリオに取り入れて運用することが大切です。
次回は金価格が動く要因について解説します
今回は金そのものの特徴と、投資商品としての特徴を解説し、
その特徴をもって積立投資と一括投資に組み入れる有効性をお伝えさせていただきました。
次回の記事では、
『金価格が動く要因』
『金価格の未来』
『コロナ禍で金に起きていること』
をお伝えさせていただきます。